マイコプラズマ肺炎の感染力と潜伏期間や症状と治療法!
秋から冬の寒い時期になると、お子さんをお持ちの方が心配になるのが、インフルエンザではないでしょうか。
そのため、インフルエンザの流行前に予防接種を受けて、重症化を防いでいる方も多いと思いますが、最近、このインフルエンザの他にも気を付けたい感染症があります。
それが、マイコプラズマ肺炎です。
マイコプラズマ肺炎は、その名の通り肺に炎症が起こるものを指しますが、風邪とよく似た症状のため、「今年の風邪はなかなか咳が抜けないな・・」と思っていたものが、実はマイコプラズマ肺炎だったというケースがあります。
放っておくと重症になってしまうこともあることから、風邪と区別をつけるためにも、マイコプラズマ肺炎が一体どのようなものなのかをしっかりと知っておく必要があります。
そこで今回は、マイコプラズマ肺炎の原因や症状、気になる感染力や治療法について調べてみました。
目次
マイコプラズマ肺炎ってどんな病気なの?
マイコプラズマ肺炎は、10~30才の若年層に発症しやすいと言われている感染症です。
以前、1984年、1988年とオリンピック開催の年に大流行したことから、「オリンピック熱」と呼ばれていましたが、最近はこの4年で流行というサイクルが崩れており、加えて2000年以降は大流行こそないものの、年々感染者を増やしていると言われていることから、一般的な感染症として認識することが大切と言えます。
マイコプラズマ肺炎は一年中発症する恐れのある病気ですが、特に気温が下がる秋から冬にかけて感染者が増える傾向があり、日本各地で小流行を繰り返しています。
マイコプラズマ肺炎の主な症状や特徴
マイコプラズマ肺炎による主な症状には、次のようなものがあります。
・発熱(37~39度)
・倦怠感
・咳
・鼻水
・頭痛
これらの症状は、一般的には風邪によく似ています。
マイコプラズマ肺炎は、その症状の出方に個人差があり、上記のような症状が強く出る場合もあれば、それほど出ないまま自然治癒することもあります。
実際に、マイコプラズマ肺炎は大人の97%が感染しているとも言われており、過去に本人が風邪だと思っていたものが実はマイコプラズマ肺炎だったというケースも多く存在しています。
また、マイコプラズマ肺炎は5才以下の乳幼児が感染しても、症状が軽いか症状が出ないで終わることも多く、年齢が上がるにつれて症状が重くなっていき、一度罹患したからといって生涯免疫があるわけではなく、繰り返し発症する方もいらっしゃいます。
なお、マイコプラズマ肺炎と風邪を見分ける方法の一つとして「咳」があります。
通常、風邪による咳は1週間から2週間ほどで消失すると言われていますが、マイコプラズマ肺炎の場合は乾いた咳が3週間以上続くことが多くあります。
咳は、長引くほどだんだんと痰が絡んだようなものになり、元々喘息を持っている方だとゼロゼロ・ヒューヒューといった喘鳴がするようになったり、呼吸がしにくくなるなど、症状が重くなります。
特に、夜間や明け方になると咳がひどくなるケースが多いようです。
マイコプラズマ肺炎の感染経路と潜伏期間は?
マイコプラズマ肺炎は、飛沫感染及び接触感染によって感染します。
飛沫感染とは、病原菌に感染した感染者のくしゃみや咳などに混じった唾液を、直接浴びることで起こるものです。
もう一方の接触感染とは、感染者の唾液が付着した物(例えばドアノブやおもちゃなど)に手で触れた後、その手で口や鼻などに触れることで感染します。
なお、マイコプラズマ肺炎は、感染するとすぐに発症するわけではなく、通常は2~3週間程度、長い場合だと4週間ほどの潜伏期間を経て発症すると言われています。
そのため、自分が感染したことに気付くのが遅くなり、その間に周囲の人へと感染させる恐れがあります。
その長い潜伏期間ゆえに、一度流行が始まると、主に幼稚園や学校など子どもが集団生活をする場所で大流行になる恐れがあります。
マイコプラズマ肺炎になる原因は?
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマニューモニエという微生物によって起こる肺炎のことを言います。
マイコプラズマニューモニエは、ウイルスとも細菌とも違う性質を持ち、中でも細胞壁を持たないというのが大きな特徴の一つとなっています。
細胞壁とは、簡単に言うと細胞が体を保つための外膜のような働きをしています。
細菌による感染症を発症すると、この細胞壁の合成を阻害することで細菌を破壊します。
そこで使用されるのが、ペニシリンやセフェムといった抗生物質なのですが、マイコプラズマニューモニエにはこれらの抗生物質が効かないことがわかっています。
そのため、風邪と診断された場合、セフェム系の抗生物質が出されることが多いのですが、服用しても症状に改善の兆しが見られない時は、マイコプラズマ肺炎を疑って再度受診するようにしましょう。
マイコプラズマ肺炎はうつるの?その感染力は?
マイコプラズマ肺炎は、感染症のため人から人へ移る病気です。
感染力自体はそれほど強くはないのですが、先述した通り長い潜伏期間があるため、知らない間に感染し、知らない間に他人へ移してしまうケースが多いと言われています。
また、マイコプラズマ肺炎の症状が風邪とよく似ていることからも、地域的に流行が見られない場合は病院へ行っても風邪と診断されてしまうことも多くあります。
そのため、咳が長く続く場合は「風邪と言われたから」と思わずに、再度病院へ行って検査や診断を受けることが大切になります。
なお、マイコプラズマ肺炎は一般的に子どもがかかる病気、と認識されている方が多くいらっしゃいますが、大人も感染します。
大人が感染すると、子どもと比べて重症化することが多く、脳炎や脳症、消化器官の症状(下痢や嘔吐など)、じんましん、心筋炎、溶血性貧血、肝機能障害などの合併症が起こることもあります。
マイコプラズマ肺炎による一般的な症状の他に、黄疸や強い倦怠感、皮膚の発疹や湿疹が見られる場合は、すぐに病院を受診するようにしましょう。
マイコプラズマ肺炎にかかった時の対処法や対策は?
マイコプラズマ肺炎と診断されたら、まずは安静にしていることが一番大切になります。
その上で、空気が乾燥すると咳込みやすくなることから、加湿器を使って湿度を高め(55~60%程度)に保ちましょう。
加湿器がない場合は、洗濯物や濡れたタオルなどを掛けておいたり、鍋に水を張ったものを置いておくだけでも効果があります。
息苦しくなければマスクをするのもよいでしょう。
マスクでも、加湿による咳の緩和効果が期待できます。
また、熱や倦怠感があると、食欲が減退して食事が摂れなくなりますが、無理に食べる必要はありません。
ただし、何も食べない・飲まないという状態が長く続くと脱水症状を引き起こす恐れがあるため、水分補給はこまめに行うようにして下さい。
その際、水よりも経口補水液やイオン飲料、麦茶など、ミネラルなどを含むものを選ぶのがよいでしょう。
お味噌汁の上澄みを飲んでもよいです。
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マイコプラズマ肺炎の診断や検査は?
マイコプラズマ肺炎は、通常の肺炎のように聴診器を胸にあてても雑音が聞こえないため、単なる風邪と診断されてしまうことも多いです。
そのため、マイコプラズマ肺炎の特徴である乾いた咳や熱が長く続いている時や、幼稚園や学校などで感染者が出ている時は自分から「マイコプラズマ肺炎の検査」を申し出ることも必要です。
なお、マイコプラズマ肺炎の診断には、胸部X線撮影と血清のマイコプラズマ抗体値の検査を行います。
マイコプラズマ肺炎に感染していると肺が白く映りますが、それだけではマイコプラズマ肺炎の確定にならないため、加えて血液検査を行う必要があります。
血液検査は、検査キットがあれば迅速検査によって30分程度で診断が可能ですが、ない場合は施設は外部への委託となり、その場合は検査結果が出るまでに一週間程度かかることがあります。
マイコプラズマ肺炎の治療法
マイコプラズマ肺炎の原因であるマイコプラズマニューモニエは、細胞壁を持たない微生物のため、一般的なペニシリンやセフェムといった抗生物質が効きません。
そのため、これまでは第一選択薬としてマクロライド系の抗生物質が使用されていましたが、2000年頃からこのマクロライド系の抗生物質に対して耐性のあるマイコプラズマ肺炎が確認されており、2006年にはその割合が30%と増えています。
マクロライド系の抗生物質に対する耐性を持つマイコプラズマ肺炎には、代わりにテトラサイクリン系、もしくはニューキノロン系の抗生物質が投与されます。
ただし、子どもの場合には副作用が懸念されることから、使用は慎重に行われます。
テトラサイクリン系ではミノマイシン、ニューキノロン系ではトフスロキサシンが使用可能となっていますが、症状の度合いが重症と判断された場合は、抗生物質の投与と共に副腎皮質ステロイド薬が併用されることもあります。
なお、マイコプラズマ肺炎は、軽症の場合である程度抵抗力や免疫力がある方は、特別な治療をすることなく自然治癒で回復するケースもあります。
妊婦がマイコプラズマ肺炎にかかったら注意すべきことは何?胎児に影響はないの?
妊娠中は、マイコプラズマ肺炎に関わらず、様々な感染症にかからないように気を付けている、という方が多いと思いますが、お腹の中の胎児が第2子や3子などの場合、幼稚園や学校に通う子どもが上にいることが少なくありません。
そのため、いくらお母さんが気を付けていても、子どもが幼稚園などから感染して、そこから家庭内感染が起こるケースも考えられます。
そうなると、心配なのが胎児への影響ではないかと思います。
現時点では、例えお母さんがマイコプラズマ肺炎に感染したとしても、そのまま胎児にも感染することはないと言われています。
ただし、発熱が長く続く場合はそれによって子宮収縮が促進される恐れもありますし、咳がひどく出るのが主な症状のため、何度もお腹に力を入れてしまうことがストレスに感じる方も多くいらっしゃいます。
そのような時は、病院で適切な治療を受けることが大切です。
妊娠中は薬の服用にも敏感になりますが、マイコプラズマ肺炎に有効な抗生物質の中には、妊婦が服用しても安全なものもあるため、症状がつらい場合は自己判断せず医師に相談するようにしましょう。
子供がマイコプラズマ肺炎にかかると出席停止になるの?日数は?
マイコプラズマ肺炎は、学校保健法により「条件によって出席停止の措置が必要」とされています。
そのため、「もう咳が出ていないから大丈夫」と親や本人が判断するのではなく、必ず学校医や診断医から「感染の恐れがない」ことを確認する必要があります。
このようなことから、出席停止の日数に対しては、医師の判断により異なるため、具体的な目安の日数は明らかではありませんが、一般的なガイドラインとしては、〝抗生物質による治療から3日ほど経過しており、症状が改善している〟と判断されると登校許可が下りるようです。
マイコプラズマ肺炎の予防法
マイコプラズマ肺炎は、飛沫感染や接触感染で感染します。
また、症状が軽い場合は風邪と誤認して、学校や会社などに登校・出勤してしまうことから、知らないうちに周囲に感染者がいる場合もあります。
そのため、マイコプラズマ肺炎は、「歩く肺炎」とも称されるそうです。
マイコプラズマ肺炎は、主に秋から冬にかけて流行するため、流行期に入ったら外出後から帰宅後はうがい・手洗いを行う、マスクを着用する、人が多く集まる場所へは行かない、などが予防の方法となります。
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マイコプラズマ肺炎の症状や原因と治療法!感染する場合もあるの?のまとめ
マイコプラズマ肺炎は、風邪と症状がよく似ているため、特に病院での診断や治療を行わない方も多くいらっしゃいます。
体の抵抗力や免疫力がある場合は、自然治癒することも多いと言われていますが、一方で子どもより大人の方が重症化するとも言われていることから、自分の体を守るだけではなく周囲に感染を広げないためにも、咳が長く続く時は病院を受診するようにして下さい。
近年、細菌性の肺炎の罹患者はその数が減っているのに対し、マイコプラズマ肺炎の罹患者は増加傾向にあるため、風邪のような症状がある時はマイコプラズマ肺炎を疑う、と覚えておくのがよいでしょう。